【本の感想】「キム・ジヨン」に幸せになって欲しい今日この頃

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Image by Lubos Houska from Pixabay

82年生まれ、キム・ジヨン」を読みました。

韓国でベストセラーとなり、アジア圏以外でも翻訳されている小説。

こんな感じのお話です↓

ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかのようなキム・ジヨン。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。女性が人生で出会う困難、差別を描き、絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作

Amazon 「82年生まれ、キム・ジヨン」 商品紹介より

韓国の小説って読んだことないので、ずっと気になっていました。

1982年に生まれた韓国女性で一番多い名前が「キム・ジヨン」というらしく、82年生まれの平均的な韓国女性の人生をなぞっている小説。

映画化もされてて今年の秋に日本でも公開されるんだそう。

主演の方見たことある……と思ったら、韓国ゾンビサスペンス映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」に出てた人だった。

(↑邦訳タイトル微妙だけど、怖くて考えさせられる面白い映画ですよ)

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韓国と日本、元男尊女卑社会だった名残はいつ消える?

韓国では若い男性を中心に「違う、これは昔の話であって今は女性の方が優遇されている」という意見も出ているようです。

(あとがきより)

私は女性なので、やはり読んでいるとジヨンに共感を寄せてしまう。

読み進める中でジヨンが置かれる境遇に辛くなってくる。

ジヨンの母が女の子を生んだ時「ごめんなさい」という場面もショックだけれど、「ママ虫」のくだりはきつかった。

「ママ虫=夫に稼がせて自分はいい御身分で喫茶店でお茶するやつ」と中傷する韓国でのネットスラング。

「ママ虫」という日本語のイメージより、韓国ではもっと辛辣な印象の言葉らしい。

子供を育てる上で、ジヨンが社会から切り離されたワンオペ状態で追い詰められていく気持ちがよく分かる。

「ママ虫になってしまった」と感じた状態はジヨンの心のバランスを崩す最後のスイッチを押しただけなのでしょう。

今まで生きてきて積み重なった様々な事が、ジワジワと心を削っていった。

この本の表紙には顔がない。

ジヨンや、彼女に強い共感を抱かざるを得ない女性たちの空虚感そのもの

(もちろん、韓国も日本もこの本に出てくるようなナチュラルに女性を蔑視する男性ばかりではないと思います。)

日本も似てるよね

作中で出てきた「形のいいおかずは必ず父・弟・祖母」で崩れたものは「母・姉・妹(ジヨン)」という部分。

私の子供の頃の家庭と同じ。

痴漢等に関して「そんな恰好をしている方が悪い」という女性側に原因を押し付ける指導も同じ。

出席番号が男子から始まるのも子供の頃は当たり前だと思ってた。

(在学中に途中で男女混合の出席番号に変ったけど。)

もちろん小説に出てくる韓国ならではのエピソードの方が強烈ですが、日本人の私でも共感できる部分が多かった。

子供は両親どちらの姓でもいいけど、父親の姓を継ぐのが一般的なこと(韓国は夫婦別姓なため)。

親族の集まりではなぜか嫁だけ動かないといけない。

なぜか夫側親族の集まりばかり優先しないといけない。

子供が出来たら、女性の方が仕事を辞めて当然という空気。

父親にとって子育ては主体的にするものでなく「たまに手伝うもの」。

未だにそういう空気が日本にも残っているのは確かでしょう。

でも20代の若い人たちは明らかその辺の感覚が違ってきている感じがしますよね。

きっと私の世代(30代)がこんな感じの最後の世代になるんじゃないかな。

韓国も同じなのかな?

私たちの子供世代が大人になる頃には「そんなの本当にあったの?小説みたいだね」という感じになってたらいいですね。

韓国における離婚制度

今の時代の韓国(少なくとも40代以降)にこれだけ男尊女卑の色が残っているのなら、離婚率も日本に比べてかなり高いんじゃないの?

そう思って調べてみたらそうでもなかった。

2018年の「人口1000人あたりの離婚件数」は2.1件 、日本よりも少し多いくらい。

「離婚熟慮期間」という制度も初めて知った。

「離婚熟慮制度」とは、離婚率の高さが社会問題となっていたため2008年に導入されたもの。

感情的に離婚することを防ぐのが目的だそうです。

ジヨンはどうしたら自分を取り戻せるのか

日本と似たような社会問題を抱えるお隣の国のストーリー。

ヨーロッパでは共感されない気がするけど、どうなんだろう?

小説ではジヨンの精神が崩壊→ジヨンの半生が語られる→終わりです。

その後どうなるかは描かれていません。

きっとその答えは、現代をリアルに生きていく「ジヨン」が見ていくことになるのでしょう。

82年生まれ、キム・ジヨン


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